バリ・ガムランの楽器
バリ・ガムランとはインドネシアのガムランは大きく分けて3つの地方様式に分けることが出来ます。
バリ様式、中部ジャワ様式、西部ジャワ(スンダ)様式、の3つです。
バリ様式はバリ=ヒンドゥの儀礼と密接な関わりを持ちながら伝承されています。
世界最大のイスラム教徒人口を擁するインドネシアの中にあってこの特殊性は際だっています。
音楽的には、テンポ、強弱などの変化が激しく、リズムは「番(つが)いリズム」を多用する複雑なものになっています。楽器編成の種類も多く、約30種類の演奏形態が存在するといわれています。その中でも最も一般的で普及率の高いガムランがガムラン・ゴング・クビャールです。
Ugal (ウガール)
バリ・ガムランの特徴
バリ・ガムランの魅力はそのリズム構造の中にあると思います。特にコテカンと呼ばれる番(つが)いリズムの技法は、複数のパートに別れて一つのリズムパターンをモザイク状に組み合わせるものですが、自分のパートと共演者のパートのパターンの違いを意識しながら正確にリズムをずらしていかなくてはなりません。
普通、私たちは合奏するとき共演者とおなじ拍子でぴったりタイミングを揃えることは習慣づいていますが、このコテカンの様に「ぴったりずらす」訓練はしたことがありません。最初は大変難しいことのように思えます。ですが熱心にやっているうちに、共演者の音も自分の音の一部に聞こえてきて、しだいにどちらが自分でどちらが相手か判らなくなり、やがて完璧に一体化したコテカンが出来上がります。そうなると喩えようもなく心地よいドライブ感がうまれます。ガムランのノリの醍醐味はここにあります。
そしてもう一つの魅力は音によるコミュニケーションにあります。ガムランには基本的に楽譜がありません。棒を振る指揮者もいません。従って曲を始めたり、終わったり、盛り上げたり、静めたりするときには特定の楽器からの「音のメッセージ」が合図となります。大抵の場合それはクンダンという太鼓が受け持ちます。クンダン奏者がガムランのリーダーであるといってもいいでしょう。クンダンと他の楽器との音のメッセージのやり取りで、一つの曲が様々なバリエーションに展開していきます。更にそれに踊りが加わると、踊り手の振りの合図によっても音楽全体が変化します。
バリ島の芸能は音楽・舞踊・演劇が渾然一体となった総合芸術です。優れた音楽家は演奏技術だけでなく、舞踊の振り付けの知識、演劇の台本に関する文学的知識、その背景にある宗教哲学への理解も持っています。芸能の熟達度がバリ人としての教養のレベルを示しているのです。学歴や偏差値ではありません。これがバリの素晴らしいところです。